概要
各種工業プラントで使用される配管は、多種多様な流体が、様々な運転条件 (温度、圧力など) の下で使用されるため、配管ごと (ラインごと) にその仕様 (材質、呼び圧力、肉厚など) を管理する必要があります。
従って、プラント内で使用される配管を、圧力・温度、材質、腐食代、流体、溶接後の熱処理の要否などからグループ化し、グループごとに使用される配管部品の仕様を、配管サービスクラスとして規定するのが一般的です。
ここでは、以下の5桁の文字列を用いた配管サービスクラスを例に、配管材料選定の仕方について説明します。

(a) 呼び圧力 (P-Tレイティング) (第1桁)
(b) 配管材質 (第2桁、第3桁)
(c) 腐食代 (第4桁)
(d) 流体分類及び特殊要求 (第5桁)
呼び圧力 (P-Tレイティング)

(a) 呼び圧力 (P-Tレイティング) (第1桁)
ASME B16.5またはB16.34に材料の種類ごとに各温度における最大使用圧力が示されており、これをP-Tレイティングと呼びます。(国内規格ではJPI-7S-65)
一般に、バルブやフランジはP-Tレイティングに基づいて標準化されており、配管サービスクラスを分割する際の最も重要な因子となります。
A: CL150
B: CL300
D: CL600
E: CL900
F: CL1500
G: CL2500
※規格上は上記以外のClass400、中間クラス、特別クラス及び限定クラスも定義されていますが、材料購入が困難になることがあるので一般には使用されません。
【各材料グループと材質の対応】
P-Tレイティングは材料の機械的特性 (引張強さ、降伏点及び耐力) が近い材料を纏めた「材料グループ」ごとに設定されており、選定された材料に合致した表を使用することが重要となります。

上表 (表1) は、プラントでよく使用される材料グループのCL150, 38℃におけるASME B16.5での最大使用圧力を示しますが、材料グループにより最大使用圧力が大きく異なるので注意が必要です。
【P-Tレイティング】
下表 (表2) は、最も頻繁に使用される炭素鋼 (材料グループ1.1) のP-TレイティングをASME B16.5から抜粋したものです。
呼び圧力がCL150, CL300, CL600と上昇すると、一部例外はあるものの、呼び圧力の数字 (150, 300, 600) に比例して、最大使用圧力は増大します。
また、温度の上昇に伴い、材料の許容応力が減少するため、最大使用圧力は低下します。

配管材質

(b) 配管材質 (第2桁、第3桁)
流体の種類及び温度によって配管材料の種類が選定されます。この例では2桁で分類していますが、プラント内で使用される材料の種類があまり多くない場合は1桁で纏めることもあります。
【配管材質の分類例】
11: 炭素鋼 (Carbon Steel) 一般 ※
13: 炭素鋼 (Carbon Steel) 高温 ※
15: 低温用炭素鋼 (Low Temp CS)
21: 低合金鋼 (C-0.5Mo)
25: 低合金鋼 (5Cr-0.5Mo)
31: ステンレス鋼 (SS304) 極低温
33: ステンレス鋼 (SS316) 常温
35: ステンレス鋼 (SS321)
37: ステンレス鋼 (SS31254)
41: 二相ステンレス鋼 (22%Cr)
43: 二相ステンレス鋼 (25%Cr)
81: 非金属 (C-PVC)
82: 非金属 (FRP)
83: 非金属 (HDPE)
91: 炭素鋼/亜鉛めっき配管
※上の分類例では、炭素鋼を2つに分類していますが、バルブの仕様が異なることがあるためであり、プロジェクトによっては分割しないケースもあります。
腐食代

(c) 腐食代 (第4桁)
流体の腐食性と使用する材料の組合せによって腐食代が決定されます。管および管継手など、耐圧部品の肉厚は、耐圧設計計算肉厚に腐食代を加えることにより計算されます。
腐食代は、流体の温度、圧力、性状、およびプラントの耐用年数を掛け合わせることで計算されますが、過去の類似装置の実績から設定されるケースもあります。
【腐食代の分類例】
A: 腐食代 0.0mm
C: 腐食代 1.5mm
E: 腐食代 3.0mm
G: 腐食代 4.5mm
H: 腐食代 6.0mm
腐食代は管、管継手などの肉厚の選定に直接的に影響を与えるため、刻みを大きくし過ぎると過剰設計となり、材料コストが跳ね上がる結果となってしまいます。
反対に、刻みが小さすぎると配管サービスクラスの数が増大し、配管部品の種類を少なくするメリットが失われてしまうので、適切な刻みで設定することが重要です。
一般に、1.5mm刻み程度で設定することが多い傾向にあります。
流体分類及び特殊要求

(d) 流体分類及び特殊要求 (第5桁)
使用される流体によっては、溶接後熱処理が必要になったり、信頼性を上げるために追加の検査が必要になったりするなど、特殊要求がつくことがあります。
また、おおまかに使用流体を規定しておくことによって、各ラインの配管サービスクラスを決定する際のミスを防止する効果もあります。
【流体分類及び特殊要求の例】
A: Instrument Air, Plant Air, Nitrogen
C: Amine
F: Wet Flare
G: Dry Flare
H: Hydrogen
N: General Process with Wet H2S
O: Oxygen
P: General Process
Q: General Process (Low Temp / Cryogenic)
S: Steam, Condensate, Boiler Feed Water
W: Fresh Water
X: Feed Gas
Y: Lube Oil, Seal Oil
配管材料選定
① 配管材料 (海外)
海外プロジェクトで一般に使用される配管材料は、流体条件に応じて主に以下となっています。

② 配管材料 (国内)
国内プロジェクトの場合、一般に以下のJIS材料がよく選定されます。

配管製造方法及び管端形状による分類
① 製造方法による分類
配管は管の製造方法により、継目無管 (Seamless Pipe) と溶接管 (Welded Pipe) に分類されます。
継目無管は管の長手方向に溶接線が無い鋼管で、一方、溶接管は比較的大口径に適用され、長手方向に溶接線がある鋼管となります。
一般に、長手方向に溶接線が無い継目無管が信頼性の面で有利と言えますが、大口径の継目無管は製造が難しく、溶接管を選択することになります。
※炭素鋼あるいは低合金鋼において継目無管のサイズ範囲を24”まで、また、ステンレス鋼において8”までとするケースもありますが、その場合、製造可能メーカーが限定されます。
② 管端形状による分類
管端形状は、大きく分けてプレーン加工 (Plain End)、ベベル加工 (Bevel End)、およびネジ加工 (Thread End) があります。
プレーン加工はスクエアーカットとも呼び、管長に対し90度に切断した状態、ベベル加工は突合せ溶接のために開先を切った状態となります。また、ネジ加工はプレーン加工にネジを切ったものとなります。
管端形状は配管の接続形式に対応したものを選定し、差込み溶接 (Socket Weld) の場合はプレーン加工、突合せ溶接 (Butt Weld) の場合はベベル加工、ネジ込み接続 (Thread Joint) の場合はネジ加工を指定します。
施工性を考慮し、小口径 (1-1/2″以下) に差込み溶接、中~大口径 (2″以上) に突合せ溶接を適用することが多いです。また、水などのユーティリティ配管で亜鉛メッキされた配管を使用する場合には、小口径 (4″あるいは6”ぐらいまで) の範囲でネジ込み溶接を適用します。


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