【電験二種過去問解説:電力・管理<H27 問1>】大容量のタービン発電機に採用される冷却方式

電験

問題

大容量のタービン発電機に採用される冷却方式に関して、次の問に答えよ。

(1) 水素冷却方式が採用される理由を水素ガスの特徴を挙げて述べよ。
   また、安全上留意すべき事項を述べよ。

(2) 固定子水冷却方式が採用される理由を水の特徴を挙げて述べよ。

解答のポイント

タービン発電機の冷却方式は、冷媒として空気、水素、水が使用されますが、各々以下の方式があります。

空気冷却方式

空気冷却型の発電機は、水素冷却、水冷却の場合に必要となる補機が不要で構造も簡単であるため、広く適用されています。
ただし、冷却性能が水素、水に対して劣るため、比較的小容量の発電機に適用されます。

水素冷却方式

水素冷却方式はタービン発電機の冷却媒体に水素ガスを用いる方式で、大容量のタービン発電機の冷却方式として採用されています。
(なお、小容量の発電機の場合は、設備コストが安く保守性に優れることから、空気冷却方式が採用されます。)

水素冷却方式には次の特徴があります。

  • 比重が空気の約0.07倍と小さく、風損が空気の約1/10となり、発電機効率が向上する。
  • 比熱が空気の14倍であり冷却効果が高く、発電機を小型化できる。
  • 絶縁物に対して不活性であり、かつコロナ発生電圧が高いためコロナ放電を生じにくく、絶縁物の劣化が少ない。
  • 水素冷却方式を用いた発電機は全密封型となるため、開放型である空気冷却方式と比較して騒音が少なくなる。

一方で、水素ガスは、空気と混合した場合、水素濃度が容積で4~75 % となると爆発の危険があるため、以下の安全対策を講じる必要があります。

  • 発電機内部の水素純度を90 % 以上に維持する。
  • 固定子枠を耐爆構造とする。
  • 軸貫通部の水素ガス漏れを防止するため、軸受の内側に油膜によるシール機構を設ける。

水冷却方式

水冷却方式は、電気抵抗率が大きい純水を、タービン発電機の電機子 (固定子) 巻線に通すことで直接冷却する方式です。

水は空気や水素ガスと比較して熱容量や熱伝達率が大きく、冷却効果が高いという特徴があります。(水は空気に対して50倍の冷却効果)
よって、固定子巻線の電流密度を大きく向上させることができるため、近年の火力発電所大型化および出力増加に伴い、水冷却方式が採用されています。

一方で、導電率の低い純水を用いる必要があるため、イオン交換樹脂、ポンプなどで構成される補機が必要になること、また、回転子などの冷却のために水素冷却と組み合わせることが多いなど、設備全体が複雑になることがデメリットして挙げられます。

解答 (試験センター解答例)

(1) 水素冷却方式が採用される理由と安全上留意すべき事項

空気と比較して水素ガスは密度が小さいため、風損が小さく発電機効率を向上させることができるほか、熱伝達率、比熱が大きいので冷却効果が高く、発電機の小型化を図ることができる。さらに、加圧して用いることにより、熱容量、熱伝達率が大きくなり、より大きな冷却能力を発揮できる。また、水素ガスは不活性であるため、絶縁物の劣化影響が少ない。以上のように、発電機の機械寸法の大幅な増大を抑えることができるなどの利点があるため、大容量のタービン発電機では、水素冷却方式が採用される。
また、安全上留意すべき事項については以下の通り。
火源があっても酸素がないと燃焼は起こらないが、水素と空気が混合した場合、ある水素濃度の範囲では爆発性になるので、これを防ぐため発電機内部の水素濃度をその範囲よりもある程度高く保つ必要がある。また、発電機内の水素が軸に沿って機外に漏れないようにする必要があり、軸受内部に油膜によるシール機構を施し、ガス漏れを防いでいる。

(2) 固定子水冷却方式が採用される理由

水は空気や水素と比較して熱容量、熱伝達率が大きく冷却効果が高いので、大容量のタービン発電機では、固定子 (電機子巻線) 水冷却方式が採用される。

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