【電験二種過去問解説:電力・管理<H13 問1>】タービン発電機の励磁方式

電験

問題

タービン発電機の次の励磁方式について、それぞれの構成とその特徴について説明せよ。

(1) 交流励磁機方式

(2) ブラシレス励磁方式

(3) サイリスタ励磁方式

解答のポイント

回転子に永久磁石を使用しない同期発電機においては、回転子を電磁石とするための励磁装置が必要になります。
励磁装置には、「直流励磁機方式」、「交流励磁機方式」、「ブラシレス励磁方式」、「サイリスタ励磁方式」の4種類があります。

直流励磁機方式

  • 励磁機として直流発電機を使用
  • AVR(※)からの信号を回転増幅機を介して励磁機に送る
  • 励磁機の電圧を変化させ、界磁電圧を調整
  • 構造上整流子が必要になり、保守が手間

※AVR (Auto Voltage Regulator;自動電圧調整装置) は、負荷遮断等で負荷が変化した際に、同期発電機の端子電圧を一定に制御する目的で設置されています。

交流励磁機方式

他励式交流発電機方式
電験教室より引用
  • 励磁機として同期発電機を使用
  • 他励方式:副励磁機 (永久磁石式) を励磁機の励磁電圧に使用
  • 自励方式:励磁用変圧器で主励磁機に電源供給
  • 整流子が不要
  • 応性に若干劣る

ブラシレス励磁方式

ブラシレス励磁方式 (他励方式の例)
電験教室より引用
  • 励磁装置を主発電機の回転子に内蔵
  • スリップリングやブラシが不要
  • 回転電機子形同期発電機となり、整流子等に大きな遠心力が発生

サイリスタ励磁方式

サイリスタ励磁方式
電験教室より引用
  • サイリスタの点弧角で、励磁電圧を制御
  • パワーエレクトロニクス技術向上により開発
  • 速応性に優れ、可動部も少ないため、信頼性が高く、保守が容易

サイリスタ励磁方式へのPSSの適用

サイリスタ励磁装置は先述のように速応性に優れ、電力系統の過渡安定度の向上に大きく寄与します。
一方で、速応性を高めすぎると、系統における同様のうち時間的スパンが長いものに関してはむしろ発散する方向に働き、定態安定度が低下する恐れがあります。

補助励磁方式としてのPSS (Power System Stabilizer:系統安定化装置) の導入
→PSSは発電機の動揺に関する信号 (出力・回転速度・周波数の偏差 (\(ΔP, Δω, Δf\)) を検知し、動揺を抑制するよう位相と大きさを調整した補助信号をAVRへ入力し、励磁電流を制御します。

解答

(1) 交流励磁機方式

 励磁装置の電源に励磁用の同期発電機を用い、整流装置で直流に整流してスリップリングを介して主機の界磁巻線に供給する方式である。
 この励磁用の同期発電機を交流励磁機といい、他励、分巻に分類される。
 他励式は、タービン発電機や交流励磁機と同一軸上に取り付けられた副励磁機の出力または励磁用変圧器を通して交流励磁機に励磁電流を供給する。
 分巻式は、交流励磁機の出力を自身の界磁電流の電源として使用する。
 整流子がなく、回転部分や接触面が少ないので保守・点検が容易であるが、交流励磁機が遅れ要素として加わるため、一般的に応答速度が遅くなる。これを解決するため、整流装置にサイリスタを使用し、励磁装置の頂上電圧を高くする。

(2) ブラシレス励磁方式

 タービン発電機と同一回転軸上に回転電機子形の同期発電機と整流子を取り付け、スリップリングを経由せずに、直接タービン発電機の界磁巻線に電流を供給する方式である。主機の界磁電流の調整は、交流励磁機の界磁電流の調整によって行う。
 ブラシがない (ブラシレス) ため、ブラシの点検や摩耗による取替えが不要、整流子の保守が不要、励磁機用の開閉装置が不要などのメリットがある。
 一方、整流器が大きい遠心力を受けることから、機械的強度を考慮する必要がある。

(3) サイリスタ励磁方式

 励磁装置が励磁用変圧器や励磁用変流器などとサイリスタを使用した整流器で構成される方式である。主発電機の出力の一部を使用してサイリスタを使用した整流器で整流して直流を得る。サイリスタ励磁方式は、バルブデバイスの構成によって、均一ブリッジ形と混合ブリッジ形に分類される。
 サイリスタ励磁方式は、回転機の慣性が入らないため感度が良く速応性があり、可動部や摺動部がないため、信頼性が高く保守性も良い。

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