問題
変圧器の主な結線方式4種をあげ、その適用の考え方について述べよ。
解答のポイント
三相変圧器の主な結線方式は、
① Y-Y結線
② Δ-Δ結線
③ Δ-Y結線、Y-Δ結線
④ Y-Y-Δ結線
⑤ V-V結線
があります。
Y-Y結線

- 一次二次電圧に位相差なし
- 第3調波の励磁電流を還流することができない
→ 三次巻線にΔ結線を設ける (Y-Y-Δ結線)
Δ-Δ結線

- 一次二次電圧に位相差なし
- Δ巻線で第3調波を還流可能
- 1台故障時もV-V結線として運転継続可能
- 中性点接地不可 → 設置変圧器
Δ-Y結線、Y-Δ結線

- Δ巻線に第3調波を還流可能
- Y側で中性点接地可能
- 一次二次電圧に位相差 \(\displaystyle\frac{π}{6}\) rad
Y-Y-Δ結線

- 一次二次電圧に位相差なし
- Δ巻線に第3調波を還流可能
- Y側で中性点接地可能
- 三次巻線を調相設備等に利用可能
V-V結線

- 単相変圧器2台で三相交流が得られる
- Δ巻線とすれば、将来増設可能
- 中性点接地不可
- Δ-Δ結線と比べ利用率と出力が低い
利用率:86.6 %
出力 :57.7 %
解答
変圧器の主な結線方式には、以下のようなものがある。
(1) Δ-Δ結線
- 中性点の接地ができないので地絡保護ができず、低電圧の回路で用いられる。
- Δ巻線内で第3高調波が環流するので電圧がひずみにくい。
- 3相のうち1相が故障した場合、残りの2相で運転を継続できる。
(2) Δ-Y結線
- Δ結線側を低電圧側に、Y結線側を高電圧側に用いれば昇圧用として有効である。
- Y結線の中性点が設置できるので、地絡保護、異常電圧の抑制が容易である。
- Δ巻線内で第3高調波が環流するので電圧がひずみにくい。
- 一次、二次間に30°の位相差があるので、並行運転するときなど注意が必要である。
- 大容量発電所の主変圧器の結線は、次の理由からΔ-Y結線が採用される。
① 発電機電圧は、技術的、経済的に高電圧にできないため変圧器を用いて昇圧しており、変圧比が大きくとれるΔ-Y結線が適している。
② 変圧器で発生する第3高調波を一次 (発電機) 側で循環させることができる。
③ 二次側のY結線にて中性点を系統側に合わせた接地方式とすることができる。
④ 一次側は発電機の中性点で接地することができる。
(3) Y-Δ結線
- Y結線側を高電圧側に、Δ結線側を低電圧側に用いれば降圧用として有効である。
- Y結線の中性点が設置できるので、地絡保護、異常電圧の抑制が容易である。
- Δ巻線内で第3高調波が環流するので電圧がひずみにくい。
- 一次、二次間に30°の位相差があるので、並行運転するときなど注意が必要である。
(4) Y-Y-Δ結線
- 一次・二次をY結線とし、三次をΔ結線とした方式で、一次・二次巻線の中性点を設置することができる。
- 一次・二次間で位相の差 (角変位) がない。
- 三次のΔ巻線は、調相設備の接続や所内電源の供給に利用される。端子を外部に出す必要のないものは、Δ巻線を変圧器内に内蔵し、安定巻線とする。
【Y-Y結線の問題点】
・変圧器の励磁電流に含まれる第3高調波が流れる回路がないため、誘起電圧がひずみ、正弦波電圧を誘起することができない。
・中性点非接地では、第3高調波の分だけ中性点電位が移動する。
・中性点接地の場合、線路定数によっては第3高調波分が直列共振を起こし、異常電圧を生じる。また、第3高調波電流が零相回路に常時流出し、通信線に対する電磁誘導障害の原因となる。
【Δ結線三次巻線の接地目的】
・第3高調波をΔ結線三次巻線に還流させることにより電圧のひずみがなくなり、正弦波電圧を誘起することができる。
・第3高調波をによる共振を原因とする異常電圧の発生と電磁誘導障害の発生を防止する。
・中性点を設置した場合、1線地絡事故時に地絡電流の1/3を環流させることにより、変圧器の零相インピーダンスを低減させ、地絡電流が検出できるようになる。
(5) V-V結線
- Δ-Δ結線の1相を取り除いたものである。
- Δ-Δ結線と比較して、出力は \(58\) % (\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{3}\))、利用率は \(87\) % (\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}}{2}\)) と低く、電圧降下が不平衡となるので故障の際の応急用として用いられるほか、将来の需要増の対応用として利用される。


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