【電験二種過去問解説:電力・管理<H23 問2>】中性点接地方式の特徴

電験

問題

6.6 [kV] 以上 154 [kV] 以下の送配電系統においては中性点接地方式として、主に抵抗接地方式と非接地方式がある。一線地絡事故に対するそれぞれの方式の特徴について両者を比較し、次の点に関して述べよ。

(1) 事故点電流

(2) 事故時の健全相電圧

(3) 事故検出

(4) 誘導障害

解答のポイント

非接地方式

  • 地絡時に健全相電圧が \(\sqrt{3}\) 倍に上昇する
  • 地絡電流は小さい → 電磁誘導障害は小さい
  • 33 kV以下の送電線に採用 (主に配電線)

直接接地方式

  • 地絡時に健全相電圧が事故前と変わらない
  • 地絡電流は大きい → 電磁誘導障害は大きい
  • 主に187 kV 以上の送電線に採用

抵抗接地方式

  • 100~1000 Ω 程度の抵抗
  • 非接地方式と直接接地方式の中間的性質
  • 地絡継電器が検出可能かつ電磁誘導障害を生じない程度に地絡電流を抑える

消弧リアクトル接地方式

  • 地絡時に健全相電圧が \(\sqrt{3}\) 倍に上昇する
  • \(L\) と \(C\) の並列共振により、地絡電流は非常に小さい
    電磁誘導障害は小さい
  • 一部の66~77 kV 系統に採用

中性点接地方式まとめ

  非接地 消弧リアクトル接地 抵抗接地 直接接地
健全相電圧上昇
地絡電流 最小
リレー検出 容易 確実
コスト 0
電圧階級 ~33 kV 66~77 kV 22~154 kV 187 kV ~

電圧階級が高いほど電圧上昇対策を優先

解答

(1) 事故点電流

【抵抗接地方式】
地絡点までの閉回路 (中性点接地抵抗 + 線路 + 地絡抵抗) が構成され、大きな電流が流れるが、100~400 [A] 程度に抑制できる。

【非接地方式】
1線地絡事故が発生した場合、中性点に電流が流れないため、事故電流は健全相と大地間の静電容量を介して流れる小さな電流となる。

(2) 事故時の健全相電圧

【抵抗接地方式】
1線地絡事故が発生した場合の中性点電圧上昇は、(事故電流) × (中性点接地抵抗) となる。このため、健全相の相電圧上昇は、接地抵抗値を小さくすることで抑えられる。

【非接地方式】
1線地絡事故が発生した場合、事故相が大地電圧となるので、健全相の相電圧は事故前の \(\sqrt{3}\) 倍となる。長距離送電線では、これ以上の電圧が発生する場合もある。

(3) 事故検出

【抵抗接地方式】
小勢力地絡継電器によって、選択遮断できる。

【非接地方式】
1線地絡電流が通常の運用電流以下であるため、地絡事故点の選別能力が低く、過電流継電器や方向距離継電器による事故検出は不可能で、過電圧地絡継電器 (OVGR) や方向性地絡継電器 (DGR) による検出が必要となる。また、事故除去時間は長くなる。

(4) 誘導障害

【抵抗接地方式】
1線地絡事故が発生した場合、大きな事故電流が大地帰路電流として流れ、通信線への電磁誘導障害が発生する可能性がある。中性点接地抵抗値が大きいほど、電磁誘導障害による影響は小さくなる。

【非接地方式】
1線地絡事故が発生した場合、大地帰路電流が小さいため、通信線への電磁誘導障害はほとんど問題とならない。

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