【電験二種過去問解説:機械・制御<H23 問1>】誘導電動機の制動

電験

問題

定格電圧 \(200\) [V]、定格周波数 \(50\) [Hz]、\(4\) 極の三相かご形誘導電動機がある。L形等価回路の一次巻線抵抗 \(r_1 = 0.1\) [Ω]、一次漏れリアクタンス \(x_1 = 0.3\) [Ω]、二次巻線抵抗の一次側換算値 \(r_2′ = 0.15\) [Ω]、二次漏れリアクタンスの一次側換算値 \(x_2′ = 0.4\) [Ω] である。誘導電動機を定格電圧、定格周波数の三相交流電源に接続して運転するとき、次の問に答えよ。ただし、励磁電流による電圧降下と鉄損は無視できるものとする。

(1) 滑り \(s = 0.05\) のときのトルク \(T\) [N・m] を求めよ。

(2) 最大トルクが得られる滑り \(s_{max}\) を求めよ。

(3) 誘導電動機が同期速度で回転しているものとする。三相交流電源のうち2線を入れ替えて逆相制動を行うとき、静止するまでの間で制動トルクが最大となる回転速度を求めよ。

(4) 上記 (3) で2線を入れ替えた直後の制動トルクを求めよ。

解答のポイント

同期速度 \(N_s\)

  \(N_s = \displaystyle\frac{120f}{p}\) [min-1] (覚える公式)

滑り \(s\)

左図において、

  \(s = \displaystyle\frac{N_s − N}{N_s}\) (定義)

変形すると、

  \(sN_s = N_s − N\)

   \(N = N_s − sN_s\)

   \(N = (1 − s)N_s\) (重要公式)

誘導電動機の等価回路

一次側に換算した二次電流の大きさは、

  \(\dot{I_2}’ = \displaystyle\frac{\dot{V_1}}{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right) + j(x_1 + x_2′)}\)

  \(I_2′ = \displaystyle\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2}}\)

※一相分の等価回路に当てはめるときは \(V_1\) は相電圧となるため、電源電圧 (線間電圧) の \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt3}\) 倍となることに注意。

機械的出力と損失

  \(I_2′ = \displaystyle\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2}}\)

鉄損   \(P_i = \color{red}{3}\color{blue}{{V_1}^2g_0}\)

一次銅損 \(P_{c1} = \color{red}{3}\color{blue}{r_1{I’_2}^2}\) 

二次銅損 \(P_{c2} = \color{red}{3}\color{blue}{{r_2}'{I’_2}^2}\)

出力   \(P_m = \color{red}{3}\color{blue}{\displaystyle\frac{1−s}{s}{r_2}'{I’_2}^2}\)

二次入力 \(P_2 = P_m + P_{c2}\)

       \(= \color{red}{3}\color{blue}{\displaystyle\frac{{r_2}’}{s}{I’_2}^2}\)

  \(P_2 : P_{c2} : P_m = 1 : s : (1−s)\)

※等価回路図は一相分の図なので、誘導電動機全体の損失と出力を計算するときは3倍となることに注意。

同期ワットとトルク

機械的出力 \(P_m\) [W] とトルク \(T\) [N・m] の関係

  \(P_m = ωT = \displaystyle\frac{2πN}{60}T\) (直流機の場合と同じ関係式) …①

    \(ω\) [rad/s]:各周波数
    \(N\) [min-1]:回転速度

二次入力 \(P_2\) [W], 同期角速度 \(ω_s\) [rad/s], 同期速度 \(N_s\) [min-1] とすると、

  \(P_2(1 − s) = ω_s(1 − s)T = \displaystyle\frac{2πN_s(1 − s)}{60}T\)

      \(P_2 = ω_sT = \displaystyle\frac{2πN_s}{60}T\) …②

同期ワット (同期速度での出力) は二次入力にに等しい (※)

※試験では②の式をを当たり前に使用すると減点対象となる可能性があるため、①式から②式を導いた上で使うのが望ましいです。

トルクの導出

  \(I_2′ = \displaystyle\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2}}\)

\(P_2 = 3\displaystyle\frac{r_2′}{s}{I’_2}^2\)

  \(= \displaystyle\frac{3\left(\displaystyle\frac{r_2′}{s}\right){V_1}^2}{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2}\)

\(T = \displaystyle\frac{P_m}{ω} = \displaystyle\frac{P_2}{ω_s}\)

 \(= \displaystyle\frac{1}{ω_s}\cdot\displaystyle\frac{3\left(\displaystyle\frac{r_2′}{s}\right){V_1}^2}{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2}\)

トルクが最大になる滑り

  \(T = \displaystyle\frac{1}{ω_s}\cdot\displaystyle\frac{3\left(\displaystyle\frac{r_2′}{s}\right){V_1}^2}{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2}\)

   \(= \displaystyle\frac{1}{ω_s}\cdot\displaystyle\frac{3r’_2{V_1}^2}{s\left\{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2\right\}}\)

すなわち、\(A = s\left\{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2\right\}\) が最小となれば、トルク \(T\) が最大となる。

 \(A = s\left\{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2\right\}\)

  \(\displaystyle\frac{dA}{ds} = 1\cdot\left\{\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2\right\} + s\cdot2\left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)\cdot\left(−\displaystyle\frac{r_2′}{s^2}\right)\)

  \(= \left(r_1 + \displaystyle\frac{r_2′}{s}\right)^2 + (x_1 + x_2′)^2 − 2\left(\displaystyle\frac{r_1r_2′}{s} + \displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s^2}\right)\)

  \(= {r_1}^2 + \displaystyle\frac{2r_1r_2′}{s} + \displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s^2} + (x_1 + x_2′)^2 − \displaystyle\frac{2r_1r_2′}{s} − \displaystyle\frac{2{r’_2}^2}{s^2}\)

  \(= {r_1}^2 − \displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s^2} + (x_1 + x_2′)^2\)

\(\displaystyle\frac{dA}{ds} = 0\) となるとき、

  \({r_1}^2 − \displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s^2} + (x_1 + x_2′)^2 = 0\)

  \(\displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s^2} = {r_1}^2 + (x_1 + x_2′)^2\)

   \(s = \displaystyle\frac{r_2′}{\sqrt{{r_1}^2 + (x_1 + x_2′)^2}}\) (\(\unicode{x2235}\) \(s > 0\))

【(参考) なぜ \(\displaystyle\frac{dA}{ds} = 0\) のとき \(A\) が最小か?】

  \(A = {r_1}^2s + 2r_1r_2′ + \displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s} + s(x_1 + x_2′)^2\)

 \(\displaystyle\frac{dA}{ds} = {r_1}^2 − \displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s^2} + (x_1 + x_2′)^2\)

 \(\displaystyle\frac{d^2A}{ds^2} = 2\displaystyle\frac{{r’_2}^2}{s^3}\) ⇒ 常に正の値 ⇒ \(\displaystyle\frac{dA}{ds}\) が徐々に増えていく 

逆相トルク

通常時

  \(s = \displaystyle\frac{N_s − N}{N_s}\)

逆相接続時

  \(s = \displaystyle\frac{N_s − (−N)}{N_s}\)

   \(= \displaystyle\frac{N_s + N}{N_s} \color{blue}{>1}\)

 誘導電動機の入力を逆相接続 (三相接続している3端子中2端子を逆に接続) すると、回転磁界の回転方向は逆になります。
 この状態では、回転磁界の回転方向に回転子へ電磁力が働き、回転子の回転を止める制動トルクが働き、ブレーキがかかります。この制動法を逆相制動といいます。\(s = 1\) でいったん回転子の回転が止まると、その後は \(0 ≦ s ≦ 1\) の通常の回転をしていきます。

回生制動

通常時

  \(s = \displaystyle\frac{N_s − N}{N_s} \color{blue}{>0}\)

回生制動時 (\(N>N_s\))

  \(s = \displaystyle\frac{N_s − N}{N_s} \color{red}{<0}\)

 回転子に外力を与えて同期速度以上で回転させているときは、滑りは \(s<0\) の値もとりえます。この場合の誘導電動機は発電していることになり、これを誘導発電機といいます。
 このとき回生制動と呼ばれるブレーキが働きますが、それに抗って回転をし続けることで発電します。

滑りの拡張まとめ

以上をまとめると、滑りの範囲によって以下の3つの状態に分けることができます。

  \(0≦s≦1\) のとき:誘導電動機
     \(s>1\) のとき:逆相制動状態の誘導電動機
     \(s<0\) のとき:誘導発電機

また、回転磁界の回転方向を正とすると、回転子に発生するトルク \(T\) [N・m] は、下図のように \(s=0\) を境目に反転します。

 上のグラフより、\(1<s≦2\) の範囲では、回転磁界の回転方向と同じ向きにトルクが発生します。この範囲では、回転子が回転磁界と逆方向に回転しているため、トルクが正の向きであっても回転子にとっては制動方向になります。
 \(s<0\) の範囲では、回転子が回転磁界と同じ方向に回転していますが、トルクが負の向きであるため、回転子にとって制動方向にトルクが発生していることになります。

解答

(1) 滑り \(s = 0.05\) のときのトルク \(T\) [N・m]

一次電流 \(I_1\) [A] の大きさは、

\({I_1} = \displaystyle\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1 + \displaystyle\frac{{r_2}’}{s}\right)^2 +(x_1 + {x_2}’)^2}}\)

     \(= \displaystyle\frac{\displaystyle\frac{200}{\sqrt3}}{\sqrt{\left(0.1 + \displaystyle\frac{0.15}{0.05}\right)^2 +(0.3 + 0.4)^2}}\)

\(=\displaystyle\frac{200}{\sqrt3\sqrt{9.61 + 0.49}}\)

\(\unicode{x2252}\) \(36.334\) [A]

同期速度 \(N_s\) [min-1] の大きさは、

  \(N_s = \displaystyle\frac{120f}{p}\)

    \(= \displaystyle\frac{120×50}{4}\)

    \(= 1500\) [min-1]

二次入力 \(P_2\) [W] は、

  \(P_2 = 3\displaystyle\frac{{r_2}’}{s}{I_1}^2\)

     \(= 3 × \displaystyle\frac{0.15}{0.05} × 36.334^2\)

     \(\unicode{x2252}\) \(11881\) [W]

  \(T = \displaystyle\frac{P_m}{ω} = \displaystyle\frac{P_2}{ω_s} = \displaystyle\frac{P_2}{\displaystyle\frac{2πN_s}{60}} = \displaystyle\frac{60P_2}{2πN_s}\)

    \(= \displaystyle\frac{60 × 11881}{2 × 3.1416 × 1500}\)

    \(\unicode{x2252}\) \(75.637\) → \(75.6\) [N・m]

(2) 最大トルクが得られる滑り \(s_{max}\)

【解答のポイント】の「トルクが最大になる滑り」より、

   \(s_{max} = \displaystyle\frac{r_2′}{\sqrt{{r_1}^2 + (x_1 + x_2′)^2}}\)

     \(= \displaystyle\frac{0.15}{\sqrt{0.1^2 + (0.3 + 0.4)^2}}\)

     \(= \displaystyle\frac{0.15}{\sqrt{0.5}}\)

     \(\unicode{x2252}\) \(0.21213\) → \(0.212\)

(3) 同期速度運転中に逆相制動を行うとき、静止するまでに制動トルクが最大となる回転速度

制動時、同期速度運転中の滑り \(s\) は、

  \(s = \displaystyle\frac{N_s − (−N_s)}{N_s} = 2\)

停止時の滑り \(s\) は、

  \(s = \displaystyle\frac{N_s − 0}{N_s} = 1\)

したがって、逆相制動時滑り \(s\) は \(2\) → \(1\) に変化していく。

したがって、上図より、制動トルクが最大となる回転速度は零のときである。

(4) 2線を入れ替えた直後の制動トルク

2線を入れ替えた直後の滑り \(s\) は \(2\) であるから、

\({I_1} = \displaystyle\frac{V_1}{\sqrt{\left(r_1 + \displaystyle\frac{{r_2}’}{s}\right)^2 +(x_1 + {x_2}’)^2}}\)

     \(= \displaystyle\frac{\displaystyle\frac{200}{\sqrt3}}{\sqrt{\left(0.1 + \displaystyle\frac{0.15}{2}\right)^2 +(0.3 + 0.4)^2}}\)

\(\unicode{x2252}\) \(160.03\) [A]

二次入力 \(P_2\) [W] は、

  \(P_2 = 3\displaystyle\frac{{r_2}’}{s}{I_1}^2\)

     \(= 3 × \displaystyle\frac{0.15}{2} × 160.03^2\)

     \(\unicode{x2252}\) \(5762.2\) [W]

  \(T = \displaystyle\frac{P_m}{ω} = \displaystyle\frac{P_2}{ω_s} = \displaystyle\frac{P_2}{\displaystyle\frac{2πN_s}{60}} = \displaystyle\frac{60P_2}{2πN_s}\)

    \(= \displaystyle\frac{60 × 5762.2}{2 × 3.1416 × 1500}\)

    \(\unicode{x2252}\) \(36.7\) [N・m]



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