【電験二種過去問解説:電力・管理<H28 問5>】変電所の接地設計

電験

問題

変電所の接地に関して、次の問に答えよ。

(1) 変電所の接地設計においては、人体にかかる歩幅電圧及び接触電圧を考慮する必要がある。歩幅電圧及び接触電圧について、それぞれ簡潔に説明せよ。

(2) 次の条件における、歩幅電圧及び接触電圧の許容値をそれぞれ求めよ。なお、手の接触抵抗は無視することとする。

 (計算条件)

  人体に対する電流の許容値:\(I_K = \displaystyle\frac{0.116}{\sqrt{t}}\) [A]

  片足あたりの大地との抵抗:\(R_F = 400\) Ω

  人体の抵抗:\(R_K = 1000\) Ω

  事故電流の継続時間:\(t = 1\) s

(3) 歩幅電圧又は接触電圧が許容値を若干超えてしまう場合、対策として、取り扱われる機器の周囲の地表の砂利層を厚くすることがある。なぜ効果があるのか簡潔に説明せよ。

解答のポイント

歩幅電圧とその許容値計算

【歩幅電圧】

落雷により接地極を通じて鉄塔から大地に大電流が流れると、地面の抵抗により地表では接地極中心へ向かって同心円状に電位上昇が発生します。電位上昇が発生しているところに人が立っていると、歩幅に合わせて両脚間に電位差、つまり電圧が発生します。この電圧を歩幅電圧といいます。

【歩幅電圧の許容値計算】

人体が許容できる電流値を \(I_K\) [A]、片足あたりの大地との抵抗値を \(R_F\) [Ω]、人体の抵抗を \(R_K\) [Ω] とすると、\(I_K\) [A] は左図のように人の両足および人体が直列接続された回路を流れるため、歩幅電圧の許容値 \(E_S\) [V] は次のように求まります。

  \(E_S = (R_K + 2R_F)I_K\)

接触電圧とその許容値計算

【接触電圧】

鉄塔に接触してしまうと、接地極と人の立っている地点との電位差、つまり電圧が人体に印加されてしまいます。この電圧を接触電圧といいます。

※ 一般に歩幅電圧より大きい

【接触電圧の許容値計算】

接触電圧の計算における電流 \(I_K\) [A] の経路については、左図のように両足で人が立っている、つまり片足あたりの大地との抵抗 \(R_F\) [Ω] が並列に接続されている回路となるため、接触電圧の許容値 \(E_T\) [V] は次のように求まります。

  \(E_T = \left(R_K + \displaystyle\frac{R_F}{2}\right)I_K\)

玉砂利を敷設する理由

変電所内には玉砂利が敷設されています。玉砂利は抵抗率が高いため、敷設することにより片足あたりの大地との抵抗値 \(R_F\) [Ω] を高めることができます。これにより、歩幅電圧・接触電圧の許容値を大きくすることができます。

※ 感電による許容値は電流が基底にあり、許容電圧値は許容電流値から間接的に求めることになります。

解答

(1) 歩幅電圧及び接触電圧について

落雷により接地極を通じて大地に大電流が流れた場合、地面の抵抗により地表では接地極中心から同心円状電圧降下が発生する。
歩幅電圧は、その電圧降下の発生箇所に人が立っていた場合に、歩幅に合わせて人体の両脚間に発生する電圧のことをいう。
また、接触電圧は上記と同様の状況で、接地した物体 (鉄塔など) に人が接触した場合、その物体と立っている地点との間に発生する電圧のことをいう。

(2) 歩幅電圧及び接触電圧の許容値

① 歩幅電圧の許容値

左図より、

  \(E_S = (R_K + 2R_F)I_K\)

    \(= (R_K + 2R_F) × \displaystyle\frac{0.116}{\sqrt{t}}\)

    \(= (1000 + 2 × 400) × \displaystyle\frac{0.116}{\sqrt{1}}\)

    \(\unicode{x2252}\) \(209\) [V]

② 接触電圧の許容値

左図より、

  \(E_S = (R_K + \displaystyle\frac{R_F}{2})I_K\)

    \(= (R_K + \displaystyle\frac{R_F}{2}) × \displaystyle\frac{0.116}{\sqrt{t}}\)

    \(= (1000 + \displaystyle\frac{400}{2}) × \displaystyle\frac{0.116}{\sqrt{1}}\)

    \(\unicode{x2252}\) \(139\) [V]

(3) 地表の砂利層を厚くすることによる効果

砂利は抵抗率が高いため、機器の周囲の地表の砂利層を厚くすることにより、片足あたりの大地との抵抗値 \(R_F\) [Ω] を高めることができる。(2) で用いた計算値からもわかるように、 \(R_F\) [Ω] を高めることで歩幅電圧・接触電圧の許容値を大きくとることができる。

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