問題
変電所の絶縁設計において支配的な要素となる雷サージに関して、次の問に答えよ。
(1) 変電所への直撃雷の防止対策について、100字程度で述べよ。
(2) 送電線からの侵入雷の発生要因を三つ挙げ、変電所内でのサージ低減対策を合わせて100字程度で述べよ。
(3) 低圧制御回路におけるケーブル敷設時でのサージ低減対策を二つ挙げ、合わせて50字程度で述べよ。
解答のポイント
雷害の種類
① 直撃雷

直撃雷とは、電線に直接雷が落ちることをいいます。直撃雷が発生すると、数百万ボルト以上の過電圧が電線に加わり、がいしや鉄塔がフラッシオーバします。(機器での絶縁は不可)
② 誘導雷

電荷を蓄えた雷雲が電線の上空に来ると、静電誘導により電線に雷雲と逆極性の電荷が蓄えられます。この状態で雷雲が落雷等で放電すると、雷雲に蓄えられていた電荷がなくなるため、電線に蓄えられた電荷は拘束を解かれ、電線中を左右に分かれて進行していきます。この現象を誘導雷といいます。
誘導雷は落雷地点周辺の電線に発生するため、雷害のなかで最も発生頻度が高いです。
③ 逆フラッシオーバ

鉄塔または架空地線に落雷すると、鉄塔の電位が送電線の電位よりも非常に高くなります。このとき、がいしの絶縁耐力を超え鉄塔から送電線へ放電が発生し、雷電流が電線へと流れます。この現象を逆フラッシオーバといいます。
変電所における雷害の対策
【絶縁協調】
絶縁協調とは、最も経済的かつ合理的に絶縁強度の設計を行うことです。
変電所に侵入する雷サージは送電線における雷害が原因ですが、雷サージに耐えることができる絶縁性能を各機器に付与することは、経済的に現実的ではありません。そのため、送電用避雷装置と同様の動作をする避雷器を引込口や母線、変圧器に設置して、機器の絶縁強度を避雷器通過後の電圧である制限電圧以上となるように設計します。

【避雷器】
避雷器とは、雷や回路の開閉などによって大きな過電圧が発生した場合に、放電により機器を保護する機器です。
通常時には、避雷器に電流は流れませんが、過電圧が発生した場合には、避雷器はただちに動作して大地に放電し、電圧の上昇を抑制して機器を保護します。この抑制された電圧のことを制限電圧といいます。
【避雷器の非線形特性】
避雷器の素材には、炭化ケイ素 (SiC) や酸化亜鉛 (ZnO) などが用いられています。酸化亜鉛は優れた電圧-電流特性を有するため、現在はおもに酸化亜鉛形の避雷器が使われています。酸化亜鉛の電圧-電流特性とは、電圧が低い間はほとんど電流が流れず、ある電圧を超えると電流が流れるようになる特性のことで、これを非線形特性といいます。

【避雷器の分類】
避雷器の構造には、すきまのあるギャップ付避雷器と、すきまのないギャップレス避雷器があります。
ギャップ付避雷器はすきまがあるため、定格電圧以下のときは電流を流しませんが、過電圧が加わるとギャップ間で放電を起こし、大地に放電します。(素子に炭化ケイ素を使用)
ギャップレス避雷器は、素子に酸化亜鉛を使用しているため、定格電圧以下のときは電流を流しませんが、過電圧が加わると酸化亜鉛の非線形特性によって電流が流れるようになり、大地に放電します。
発変電用避雷器としては酸化亜鉛形ギャップレス避雷器が、配電用避雷としては炭化ケイ素形ギャップ付避雷器がおもに使われています。
低圧制御回路におけるサージ低減対策
低圧の制御回路には、主回路を通過した雷サージによる誘導サージや、制御ブレーカーを開閉することによる開閉サージなどが発生するため、制御機器を正常にしようするためにこれらを低減する必要があります。
具体的には、金属シース付きの低圧制御ケーブルを採用することや、低圧制御ケーブルを高圧ケーブルから離隔することが考えられます。

解答
(1) 変電所内への直撃雷の防止対策
変電所の変圧器や開閉器などの電力機器を雷の直撃に耐えるように絶縁することは極めて困難であるため、架空地線と避雷鉄塔による変電所内の遮へいと設置を施して、直撃雷の発生を防止する。

(2) 送電線からの侵入雷の発生要因を三つ、変電所でのサージ低減対策
送電線への直撃雷、鉄塔フラッシオーバ、誘導雷がある。
いずれの場合も避雷器を変圧器付近、母線、線路引き込み口、あるいはそれらを組み合わせて設置して、雷サージの低減を行うことにより、保護する機器の絶縁レベルとの協調を行う。
(3) 低圧制御回路におけるケーブル敷設時でのサージ低減対策を二つ
- 金属シース付き低圧制御ケーブルを採用しシースを設置する。
- 低圧制御ケーブルを高電圧ケーブルから離す。


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