【電験三種過去問解説:電力<H28 問8改>】架空送電線路の誘導障害

電験

問題

 次の文章は、架空送電線路の誘導障害に関する記述である。文中の    に当てはまる適切な語句を記載せよ。

 架空送電線路と通信線路とが長距離にわたって接近交差していると、通信線路に対して電圧が誘導され、通信設備やその取扱者に危害を及ぼすなどの障害が生じる場合がある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。

① 架空送電線路の電圧によって、架空送電線路と通信線路間の  (1)  を介して通信線路に誘導電圧を発生させる  (2)  障害。
② 架空送電線路の電流によって、架空送電線路と通信線路間の  (3)  を介して通信線路に誘導電圧を発生させる  (4)  障害。

解答のポイント

静電誘導障害

通信線に流れる電流 \(\dot{I_0}\) は、

         \(\dot{I_0} = \dot{I_a} + \dot{I_b} + \dot{I_c}\)

      \(jωC_0\dot{E_0} = jωC(\dot{E_a} − \dot{E_0}) + jωC(\dot{E_b} − \dot{E_0}) + jωC(\dot{E_c} − \dot{E_0})\)

      \(jωC_0\dot{E_0} = jωC(\dot{E_a} + \dot{E_b} + \dot{E_c}) − j3ωC\dot{E_0}\)

  \(jω(C_0 + 3C)\dot{E_0} = jωC(\dot{E_a} + \dot{E_b} + \dot{E_c})\)

   \((C_0 + 3C)\dot{E_0} = C(\dot{E_a} + \dot{E_b} + \dot{E_c})\)

         \(\dot{E_0} = \displaystyle\frac{C(\dot{E_a} + \dot{E_b} + \dot{E_c})}{C_0 + 3C}\)

よって、三相平衡 (\(\dot{E_a} + \dot{E_b} + \dot{E_c} = 0\)) の時、通信線は \(0\) Vとなる。

【静電誘導障害の影響】

  • 通信線に電圧が生じて、雑音等の通信障害の発生
  • 電線直下の作業者が感電

静電誘導障害の対策

【電線側】

  • 電線と通信線の離隔距離の拡大
  • 電線のねん架

【通信線側】

  • 遮へい線の設置
  • 通信線への遮へいケーブルの採用
  • 通信線への光ファイバケーブルの採用

電磁誘導障害

各送電線によって通信線に誘起される電圧 \(\dot{E}\) は、

  \(\dot{E} = jωM\dot{I_a} + jωM\dot{I_b} + jωM\dot{I_c}\)

   \(= jωM(\dot{I_a} + \dot{I_b} + \dot{I_c})\)

よって、三相平衡 (\(\dot{I_a} + \dot{I_b} + \dot{I_c} = 0\)) の時、通信線は \(0\) Vとなる。

【電磁誘導障害の影響】

  • 通信線に電圧が生じて、雑音等の通信障害の発生
  • 電線直下の作業者が感電

【電磁誘導障害の種類】

  • 異常時誘導電圧
     一線地絡事故等により流れる電流が不平衡になり発生
  • 常時誘導電圧
     負荷の不平衡相互インダクタンスの非対称性により発生
  • 常時誘導雑音電圧
     電線に流れる電流に高調波が含まれると発生

電磁誘導障害の対策

先に挙げた静電誘導障害の対策が電磁誘導障害の対策としても有効です。それら以外の電線側の電磁誘導障害の対策としては、以下のようなものがあります。

【異常時誘導電圧の対策】

  • 高抵抗接地方式の採用
     中性点接地方式に高抵抗の抵抗接地方式を採用することにより、地絡事故が発生したときの地絡電流が小さくなり、異常時誘導電圧が小さくなります。
     なお、この対策は送電する電圧帯が22~154 kV系である場合に限定されます。
  • 消弧リアクトル接地方式の採用
     中性点接地方式に消弧リアクトル接地方式を採用し、地絡事故が発生したときの地絡電流を自動的に消滅させることにより、線路を遮断せずに電力の供給を継続することができます。そのため、消弧リアクトル接地方式を採用した場合、地絡事故由来の電流不平衡による異常時誘導電圧は発生しません。
     なお、この対策は送電する電圧帯が66 kV または 77 kV系である場合に限定されます。
  • 地絡故障箇所の遮断
     地絡発生時に故障箇所を速やかに遮断することで、異常時誘導電圧の継続時間が短くなります。
  • 導電性の高い架空地線の採用
     導電性の高い架空地線を採用すると、一線地絡事故時に架空地線に流れる事故電流の割合が増え、その結果、大地帰路電流が小さくなって異常時誘導電圧を抑えることができます。
  • 架空地線の多条化
     架空地線を多条化することはその断面積を大きくすることと等価であるため、導電性の高い架空地線を採用するときと同様の効果が得られます。

【常時誘導雑音電圧の対策】

  • 高調波の抑制
     「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」に則って、需要家から発生する高調波を抑制することで、常時誘導雑音電圧を抑えることができます。

静電誘導障害と電磁誘導障害の比較

  • 静電誘導障害は、電線の各相の電圧電線と通信線の間の静電容量の2種類のパラメータによって発生します。
  • 電磁誘導障害は、電線の各相の電流電線と通信線の間の相互インダクタンスの2種類のパラメータによって発生します。

解答

 次の文章は、架空送電線路の誘導障害に関する記述である。文中の    に当てはまる適切な語句を記載せよ。

 架空送電線路と通信線路とが長距離にわたって接近交差していると、通信線路に対して電圧が誘導され、通信設備やその取扱者に危害を及ぼすなどの障害が生じる場合がある。この障害を誘導障害といい、次の2種類がある。

① 架空送電線路の電圧によって、架空送電線路と通信線路間の(1) 静電容量を介して通信線路に誘導電圧を発生させる(2) 静電誘導障害。
② 架空送電線路の電流によって、架空送電線路と通信線路間の(3) 相互インダクタンスを介して通信線路に誘導電圧を発生させる(4) 電磁誘導障害。

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