問題
送電線路における再閉路方式について、その目的と無電圧時間ならびに遮断する相と再閉路の実施方法により分類し、それぞれの概要について説明し、この方式を採用することの利点を述べよ。
解答のポイント
再閉路の速度による分類
① 高速度再閉路方式
1秒程度で電路を再閉路する方式
187 ~ 500 kV の送電系統で採用
② 中速度再閉路方式
数秒 ~ 25秒程度で電路を再閉路する方式
110 ~ 154 kV の送電系統で採用
③ 低速度再閉路方式
1分程度で電路を再閉路する方式
22 ~ 77 kV の送電系統で採用
相の遮断方法による分類
① 三相再閉路方式

- 事故発生時、三相全てを遮断
- 健全相からの誘導がないため消アークイオン時間が短い
- 再閉路の際の同期確認に時間を要する
中速度再閉路、低速度再閉路方式に採用
② 単相再閉路方式

- 1線地絡事故発生時、事故相のみを遮断
- 再閉路の際の同期確認が不要
- 健全相からの誘導があるため消アークイオン時間が長い
高速度再閉路、低速度再閉路方式に採用
③ 多相再閉路方式

- 並行2回線の線路での多線地絡でも事故相のみを遮断
- 異なる二相以上の健全相が閉路されていれば、早期に再閉路可能
主に高速度再閉路方式に採用
再閉路方式の採用組合せ

〇:採用
※1:時間内に消アークイオンがされなかった等の高速度再閉路不成立時に中速度再閉路方式に
移行
※2:単相再閉路方式を採用した線路において、2線地絡が発生した場合に三相再閉路方式に移行
解答
1. 再閉路方式の概要
自動再閉路方式には、「その目的と無電圧時間の長さ」から、低速度再閉路、中速度再閉路、高速度再閉路があり、また、「事故時における遮断する相と再閉路の実施方法により」、三相再閉路、単相再閉路、多相再閉路がある。これらは、例えば高速度単相再閉路のように組み合わせて呼ばれている。
(1) 目的と無電圧時間による分類
① 低速度再閉路
線路の自動復旧のために行われる再閉路で、数秒~1分程度の無電圧時間をもって再閉路する。
② 中速度再閉路
線路の自動復旧と高速度再閉路条件不成立時の系統連系維持を目的に実施される。
主にスリートジャンプによる2線短絡事故を防止するための送電線の振動の減衰を考慮して無電圧時間が決定される。このほか、発電所近傍の送電線で事故が起きると発電機に電気トルク変動が生じ、タービンと発電機間の軸が固有のねじり振動数で振動するため、その軸振動の減衰や分岐負荷につながる誘導電動機の残留電圧の減衰、ギャロッピングによる送電線の振動の減衰なども考慮して無電圧時間が決定される。数秒~25秒程度の無電圧時間をもって再閉路する。
③ 高速度再閉路
系統連系の維持と系統安定度の向上を目的に実施される。
無電圧時間は主として消イオン時間と安定度確保の面から決定され、0.4秒~1.0秒程度の無電圧時間をもって再閉路する。
(2) 遮断相と再閉路実施方法による分類
① 三相再閉路
事故相、事故相数などの事故様相に関係なく、当該回線の故障により回線単位で三相一括遮断し、三相一括で再閉路する方式である。再閉路する場合、遮断した線路両端の母線電圧が同期状態であることが必要であり、線路遮断により系統が分離する場合には再閉路できない。同期を確認する方法としては、並行2回線の場合、隣回線の潮流を確認するか、あるいは相手側母線と別の送電線でループが構成されていることを確認する。
② 単相再閉路
回線ごとの1線地絡故障に対し故障相のみを遮断し、残りの2相で電力の送受電を行い、同期を保ちながら故障後の一定無電圧時間をもって再閉路する方式である。
1線遮断後の無電圧時間中には送電線が不平衡状態となるため逆相電流が発生し、このような状態で長時間運転すると近傍の発電機ロータに過熱が生じるので、高速度再閉路することが不可欠である。
また、再閉路方式と組み合わせる主保護方式は、地絡故障時の故障相判別が必要となるとともに、遮断器は各相単位に独立して開閉できることが必要である。
③ 多相再閉路
並行2回線送電線において、2回線合計で少なくとも2相が健全であれば2相以上の連系により電力の送受電を行い、同期を保ちながら故障後の一定無電圧時間をもって再閉路する方式である。
本方式は、2相以上が健全であれば故障相を遮断して再閉路を行わせるものであり、例えば、2回線中1回線の三相事故や1線地絡事故であっても高速度再閉路を行うように、三相再閉路や単相再閉路の機能を有している優れた再閉路方式であり、2回線同時事故時の電力系統安定度向上への効果は非常に大きい。
2. 再閉路方式を採用する利点
自動再閉路方式は次のような効果が期待できる。
① 事故が数箇所で多発しても電力の送受電を停止することなく事故除去を行うことができるとともに事故復旧を迅速に行うことができる。
② 系統の過渡安定度の向上が図られ、送電容量を増大することができる。
③ 1系統が遮断したことによる他系統および機器の過負荷をそれらの過負荷許容時間内に復旧できる。
④ 系統が自動復旧するため、操作の省力化が図れる。
なお、ケーブル線路においては、いったん事故となった場合、続流遮断後も絶縁不良となって永久事故となるのが通常であるため再閉路は行わない。


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