【電験二種過去問解説:電力・管理<H24 問4>】配電用変電所における三相短絡電流計算

電験

問題

 図のように、\(2000\) kV・A の発電設備が連系されている配電用変電所において、新たに \(800\) kV・A の発電設備を連系する際の a 点における三相短絡電流計算について、次の問に答えよ。
 なお、各地点の \(\%Z\) は図中に示したとおりの値であり、特に断りのない場合は、\(10\) MV・A ベースである。また、線路の抵抗は無視できるものとし、配電用変電所からL1 及び G1 までの高圧配電線はこう長が短いことから \(\%Z\) は無視できるものとする。(配電用変電所の二次側電圧は6.6 kV とする。)

(1) 連系する \(800\) kV・A の発電設備の \(\%Z\) (\(10\) MV・A ベース) を求めよ。

(2) \(800\) kV・A の発電設備を連系した後における a 点の三相短絡インピーダンス \(\%Z\) (\(10\) MV・A ベース) を求めよ。

(3) \(800\) kV・A の発電設備を連系した後における a 点の三相短絡電流値 [kA] を求めよ。

(4) (3) において、a 点の三相短絡電流値 [kA] を遮断器の定格遮断電流 (\(10\) kA) 以下に抑制するために、新たに連系する発電設備設置者構内に限流リアクトルを設置する場合におけるリアクトルの最低インピーダンス \(\%Z\) (\(10\) MV・A ベース) を求めよ。

解答のポイント

三相交流回路のパーセントインピーダンス

  %\(Z = \displaystyle\frac{ZI_n}{\displaystyle\frac{V_n}{\sqrt{3}}} × 100\) [%]

    \(=\) \(\displaystyle\frac{\sqrt{3}ZI_n}{V_n} × 100\) [%] (定義)

    \(= \displaystyle\frac{\sqrt{3}ZI_nV_n}{{V_n}^2} × 100\) [%]

    \(= \) \( \displaystyle\frac{P_nZ}{{V_n}^2} × 100\) [%] (重要公式)

パーセントインピーダンスの基準容量換算

三相交流回路のパーセントインピーダンスの重要公式より、

  \(\%Z = \displaystyle\frac{P_nZ}{{V_n}^2} × 100\) [%]

       ⇓ \(\%Z\) は \(P_n\) に比例

  \(\%{Z_A}’ = \displaystyle\frac{P_B}{P_A}\%Z_A\) [%]

つまり、基準容量を \(P_{BASE}\)、自己容量を \(P_{OWN}\)、基準容量換算前のパーセントインピーダンスを \(\%Z\) とすれば、基準容量換算後のパーセントインピーダンス \(\%Z’\) は以下のように表される。

  \(\%Z’ = \displaystyle\frac{P_{BASE}}{P_{OWN}}\%Z\) [%]

三相3線交流回路の短絡電流とパーセントインピーダンスの関係

三相短絡時の短絡電流は、

  \(I_s = \displaystyle\frac{E_n}{Z}\) [A]

より、パーセントインピーダンスは、

  %\(Z = \displaystyle\frac{ZI_n}{E_n} × 100\) [%]

    \(= \displaystyle\frac{I_n}{\displaystyle\frac{E_n}{Z}} × 100\) [%]

    \(= \displaystyle\frac{I_n}{I_s} × 100\) [%]

  \(I_s = \displaystyle\frac{I_n}{\%Z} × 100\) [A]

送電系統における発電機の取扱い

 短絡電流を計算する際は、その前段として短絡事故点から系統方向を見たパーセントインピーダンス \(\%Z\) を計算します。ただし、送電系統に接続されている負荷は無視します。この理由としては、短絡時に負荷側から短絡電流 \(I_s\) [A] が流れてくることはなく、負荷の有無にかかわらず短絡電流は系統から系統事故点までのパーセントインピーダンスによって決まるからです。

 発電機は系統と同様に短絡電流の供給源になるので、系統と並列接続するものとして扱うことができます。例えば、変圧器を介して \(154\) kV 系統と接続されている負荷に発電機 G が並列に連系されている場合に、負荷側の点 a で短絡が発生したときを考えます。

a 点からみたインピーダンスは、電圧源を短絡して、

  \(\%Z = \displaystyle\frac{(\%Z_{154} + \%Z_{Tr})\%Z_G}{(\%Z_{154} + \%Z_{Tr}) + \%Z_G}\)

解答

(1) \(800\) kV・A 発電設備の \(\%Z\) (\(10\) MV・A ベース)

G2 の \(10\) MV・A 換算したインピーダンスを \(\%Z_{G2}\) とすると、

  \(\%Z_{G2} = \displaystyle\frac{10 × 10^6}{800 × 10^3} × 15\)

      \(= \displaystyle\frac{10000}{800} × 15\)

      \(= 187.5\) → \(188\) [%]

(2) a 点の三相短絡インピーダンス \(\%Z\) (\(10\) MV・A ベース)

G1 の \(10\) MV・A 換算したインピーダンスを \(\%Z_{G1}\) とすると、

  \(\%Z_{G1} = \displaystyle\frac{10 × 10^6}{2000 × 10^3} × 15\)

      \(= \displaystyle\frac{10}{2} × 15\)

      \(= 75\) [%]

事故が発生すると、左図のように a 点に向かい電流が流れるから、三相短絡インピーダンス \(\%Z_a\) は、

\(\displaystyle\frac{1}{\%Z_a} = \displaystyle\frac{1}{7.5 + 2.5} + \displaystyle\frac{1}{75} + \displaystyle\frac{1}{12 + 187.5}\)

   \(\unicode{x2252}\) \(0.1 + 0.013333 + 0.0050125\)

   \(\unicode{x2252}\) \(0.11835\)

\(\%Z_a = \displaystyle\frac{1}{0.11835}\)

   \(\unicode{x2252}\) \(8.4495\) → \(8.45\) [%]

(3) a 点の三相短絡電流値 [kA]

a 点における定格電流 \(I_n\) [A] は、

 \(I_n = \displaystyle\frac{P_n}{\sqrt{3}V_n}\)

   \(= \displaystyle\frac{10 × 10^6}{\sqrt{3} × 6.6 × 10^3}\)

   \(\unicode{x2252}\) \(874.77\) [A]

よって、三相短絡電流 \(I_s\) [kA] は、

  \(I_s = \displaystyle\frac{100I_n}{\%Z_a}\)

  \(= \displaystyle\frac{100 × 874.77}{8.4495}\)

   \(\unicode{x2252}\) \(10353\) [A] → \(10.4\) [kA]

(4) a 点の三相短絡電流値 [kA] を遮断器の定格遮断電流 (\(10\) kA) 以下に抑制するために設置する限流リアクトルの最低インピーダンス \(\%Z\) (\(10\) MV・A ベース)

三相短絡電流値が \({I_s}’ = 10\) [kA] の時の a 点から見たインピーダンス\(\%{Z_a}’\) は、

  \({I_s}’ = \displaystyle\frac{100I_n}{\%{Z_a}’}\)

 \(\%{Z_a}’= \displaystyle\frac{100I_n}{{I_s}’ }\)

    \(= \displaystyle\frac{100 × 874.77}{10 × 10^3}\)

    \(= 8.7477\) [%]

したがって、合成インピーダンスを求める式より、

     \(\displaystyle\frac{1}{8.7477} = \displaystyle\frac{1}{7.5 + 2.5} + \displaystyle\frac{1}{75} + \displaystyle\frac{1}{12 + \%Z_L + 187.5}\)

     \(0.11432 = 0.1 + 0.013333 + \displaystyle\frac{1}{\%Z_L + 199.5}\)

  \(\displaystyle\frac{1}{\%Z_L + 199.5}\) \(\unicode{x2252}\) \(0.00098667\)

  \(\%Z_L + 199.5 = \displaystyle\frac{1}{0.00098667}\)

  \(\%Z_L + 199.5\) \(\unicode{x2252}\) \(1013.5\)

       \(\%Z_L = 814\) [%]

※上式の計算途中に非常に小さな値が出てくるので、有効数字や計算方法により多少の誤差が生じる。(試験センター解答でも記載あり)

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