問題
図1に示すように、無負荷の三心ケーブルの金属遮へい部を接地して3本の導体に周波数 \(f\) [Hz] の三相平衡電圧 (線間電圧) \(V_1\) [V] を加えたときに各導体に流れる電流を \(I_1\) [A] とする。また、図2に示すように、全ての導体を接続して周波数 \(f\) [Hz] の交流電圧 \(V_2\) [V] を加えたときに各導体に流れる電流を \(I_2\) [A] とする。このケーブルについて次の問に答えよ。ただし、導体相互間の静電容量は等しく、各導体と金属遮へい部間の静電容量も等しいものとする。また、各導体の抵抗、インダクタンスは無視する。
(1) 導体相互間の静電容量 \(C_m\) [F]、及び各導体と金属遮へい間の静電容量 \(C_0\) [F] をそれぞれ求めよ。
(2) このケーブルを図3のように接続して周波数 \(5f\) [Hz] の交流電圧 \(V_3\) [V] を加えた。流れる電流 \(I_3\) [A] を \(I_1\) [A]、\(I_2\) [A]、\(V_1\) [V]、\(V_2\) [V]、\(V_3\) [V] を用いて求めよ。



解答のポイント
架空電線の静電容量

① 電線 = 導体
② 空気 = 絶縁体
①、②を合わせてコンデンサとみなす
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対地静電容量
線間静電容量
Δ-Y変換とY-Δ変換

【Δ-Y変換】
\(R_A = \displaystyle\frac{r_Ar_B}{r_A + r_B + r_C}\) \(R_B = \displaystyle\frac{r_Br_C}{r_A + r_B + r_C}\) \(R_C = \displaystyle\frac{r_Cr_A}{r_A + r_B + r_C}\)
【Y-Δ変換】
\(r_A = \displaystyle\frac{R_AR_B + R_BR_C + R_CR_A}{R_B}\) \(r_B = \displaystyle\frac{R_AR_B + R_BR_C + R_CR_A}{R_C}\)
\(r_C = \displaystyle\frac{R_AR_B + R_BR_C + R_CR_A}{R_A}\)
ケーブルの静電容量
ケーブルの静電容量を示す等価回路

上図の等価回路を下図のように Δ-Y 変換すれば、Δ-Y 変換後の回路において、相電圧が平衡していれば Y 結線の中性点は電位がゼロであるため、導体から見て \(3C_m\) と \(C_g\) は並列の関係となり、合成した静電容量 \(C_0\) [F] は下記のように計算されます。

静電容量の測定 (パターン1:3線一括して計測)
下図のように、3線を接続して一括の状態にしたときの静電容量を \(C_1\) [F] と計測する場合を考えます。
この場合、3線が短絡しているので線間静電容量はゼロとなります。また、3線を一括して1つのケーブルと扱えるので、対地静電容量 \(C_g\) が3個並列していることになります。
したがって、計測される静電容量 \(C_1\) [F] は下記のように計算されます。

静電容量の測定 (パターン2:2線接地して残り1線を計測)
下図のように、2線を接地して、残り1線の静電容量を \(C_2\) [F] と計測する場合を考えます。
この場合、残り1線について、対地静電容量と接地した2線との間の線間静電容量のみが計測されます。
したがって、計測される静電容量 \(C_2\) [F] は下記のように計算されます。

静電容量の測定 (パターン3:1線接地して残り2線を一括して計測)
下図のように、1線を接地して、残り2線を一括して静電容量を \(C_3\) [F] と計測する場合を考えます。
この場合、一括した2線について、対地静電容量と接地した1線との線間静電容量の並列接続された値が計測されます。
したがって、計測される静電容量 \(C_3\) [F] は下記のように計算されます。

静電容量の測定 (パターン1’:3線一括して計測<計測値が静電容量でない場合>)
問題によっては計測値が静電容量ではなく、印加した電圧の大きさ \(V_1\) [V] と各周波数 \(ω\) [rad/s]、およびそのときに流れた電流の大きさ \(I_1\) [A] が提示されるときがあります。
このとき、電流の大きさ \(I_1\) [A] と対地静電容量 \(C_g\) [F] との関係式は下記のように計算されます。

なお、パターン1との関連でいうと、次の関係があります。
\(C_1 = 3C_g = \displaystyle\frac{I_1}{ωV_1}\)
※電圧と電流の位相は関係なく、大きさを用いた式なので、虚数単位 \(j\) が登場しないことに注意。
解答
(1) 導体相互間の静電容量 \(C_m\) [F]、及び各導体と金属遮へい間の静電容量 \(C_0\) [F]

図2における合成静電容量 \(C_2\) [F] は、
\(C_2 = 3C_0\)
であるから、オームの法則より、
\(V_2 = \displaystyle\frac{1}{2πfC_2}\cdot3I_2\)
\(= \displaystyle\frac{3I_2}{2πf\cdot3C_0}\)
\(C_0 = \displaystyle\frac{I_2}{2πfV_2}\)

左図のとおりΔ-Y 変換できるので、1線当たりの静電容量 \(C_1\) [F] は、
\(C_1 = 3C_m + C_0\)

一相分の等価回路より、
\(\displaystyle\frac{V_1}{\sqrt{3}} = \displaystyle\frac{1}{2πfC_1} \cdot I_1\)
\(C_1 = \displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{2πfV_1}\)
\(3C_m + C_0 = \displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{2πfV_1}\)
\(3C_m = \displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{2πfV_1} − C_0\)
\(= \displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{2πfV_1} − \displaystyle\frac{I_2}{2πfV_2}\)
\(= \displaystyle\frac{1}{2πf}\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{V_1} − \displaystyle\frac{I_2}{V_2}\right)\)
\(C_m = \displaystyle\frac{1}{6πf}\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{V_1} − \displaystyle\frac{I_2}{V_2}\right)\)
(2) 図3における \(I_3\) [A]

左図より、合成静電容量 \(C_3\) [F] は、
\(C_3 = 2C_m + 2C_0\)
\(= \displaystyle\frac{1}{3πf}\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{V_1} − \displaystyle\frac{I_2}{V_2}\right) + \displaystyle\frac{I_2}{πfV_2}\)
\(= \displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{3πfV_1} − \displaystyle\frac{I_2}{3πfV_2} + \displaystyle\frac{I_2}{πfV_2}\)
\(= \displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{3πfV_1} + \displaystyle\frac{2I_2}{3πfV_2}\)
\(= \displaystyle\frac{1}{3πf}\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{V_1} + \displaystyle\frac{2I_2}{V_2}\right)\)

よって、オームの法則より、
\(V_3 = \displaystyle\frac{1}{2π \cdot 5fC_3}\cdot I_3\)
\(I_3 = 10πfC_3V_3\)
\(= 10πf \cdot \displaystyle\frac{1}{3πf}\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{V_1} + \displaystyle\frac{2I_2}{V_2}\right)V_3\)
\(= \displaystyle\frac{10}{3}\left(\displaystyle\frac{\sqrt{3}I_1}{V_1} + \displaystyle\frac{2I_2}{V_2}\right)V_3\)

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