【電験2種過去問解説:機械・制御<R6 問1>】同期機の無負荷飽和曲線と三相短絡特性曲線

電験

問題

同期機の特性に関して,次の問に答えよ。

(1) 図に同期機の無負荷飽和曲線と三相短絡特性曲線を示している。

(a) 図中の (A) はどちらの特性曲線か示せ。また,この特性曲線を得る試験方法を100 字程度以内で述べよ。

(b) 図中の (B) はどちらの特性曲線か示せ。また,この特性曲線を得る試験方法を100 字程度以内で述べよ。

(c) 短絡比は界磁電流を用いて \(\displaystyle\frac{I_{f1}}{I_{f2}}\)として求めることができるが,短絡比の定義を,電機子電流の観点から100 字程度以内で述べよ。

(2) 定格電圧 200 V ,定格電流 144.3 A ,50 Hz の三相同期発電機を試験した結果,図中の \(I_{f1}\) ,\(I_{f2}\) はそれぞれ \(I_{f1}=\) 2.8 A , \(I_{f2}=\) 2.5 A として得られた。

(a) この同期発電機の定格容量 [kV⋅A] を求めよ。

(b) この同期発電機の単位法で表した同期インピーダンス [p.u.] を求めよ。

(c) この同期発電機の同期インピーダンス [Ω] を求めよ。

解答のポイント

① 無負荷飽和曲線と三相短絡曲線
1) 無負荷飽和曲線
無負荷飽和曲線とは、三相同期発電機を①無負荷のまま②定格速度で運転している場合における、無負荷の端子電圧\(V=\sqrt{3}E\)[V]と界磁電流\(I_f\)[A]の関係を示す曲線です。
※界磁電流\(I_f\)が増加すると、鉄心は飽和するので、電圧の増加が鈍くなって曲線になります。


無負荷飽和曲線作成時の回路
電験教室より引用


無負荷飽和曲線
電験教室より引用


2) 三相短絡曲線
三相短絡曲線とは、三相同期発電機の①三つの端子を短絡させ、②定格速度で運転している場合における、界磁電流\(I_f\)と短絡電流\(I_s\)の関係を示す曲線です。
※一般に、同期リアクタンスは電機子巻線抵抗より十分大きく、短絡電流は遅れ電流となり、電機子反作用 (減磁作用) によって、鉄心の磁気飽和が生じないので、ほぼ比例関係になります。


三相短絡曲線作成時の回路
電験教室より引用


三相短絡曲線
電験教室より引用

② 短絡比
短絡比とは、①無負荷で定格電圧\(V_n\)を発生させる界磁電流\(I_{fs}\)と、②定格電流\(I_n\)と等しい三相短絡電流を発生させる界磁電流\(I_{fn}\)の比 (\(K_s=\displaystyle\frac{I_{fs}}{I_{fn}}\)) をいいます。
また、以下のグラフより、\(K_s=\displaystyle\frac{I_{fs}}{I_{fn}}=\displaystyle\frac{I_s}{I_n}\)でもあるので、短絡比は、三相同期発電機を三相短絡したとき、定格電流\(I_n\)[A]の何倍の電機子電流 (短絡電流) \(I_s\)[A]が流れるかを表すものともいえます。


短絡比
電験教室より引用

③ 百分率同期インピーダンスと短絡比
 %\(Z_s=\displaystyle\frac{Z_sI_n}{E_n}\) × 100 (定義)  \(E_n\):定格電圧 (相電圧) \(Z_s\):同期インピーダンス

    \(=\displaystyle\frac{I_n}{\displaystyle\frac{E_n}{Z_s}}\) × 100

    \(=\displaystyle\frac{I_n}{I_s}\) × 100

    \(=\displaystyle\frac{100}{K_s}\)  (重要公式)

※単位法の同期インピーダンスと短絡比
 \(Z[p.u.]=\displaystyle\frac{1}{K_s}\)  (重要公式)

 単位法の場合は百分率同期インピーダンスの関係式の100を1にする (互いに逆数の関係)

④ 同期インピーダンスのオーム法から単位法への換算
 \(Z[p.u.]=\displaystyle\frac{Z_sI_n}{E_n}\) (定義)  \(E_n\):定格電圧 (相電圧) [V] \(Z_s\):同期インピーダンス [Ω]

      \(=\displaystyle\frac{Z_sI_n}{\displaystyle\frac{V_n}{\sqrt{3}}}\)   \(V_n\):定格電圧 (線間電圧) [V] 

      \(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}Z_sI_n}{V_n}\)

      \(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}Z_sV_nI_n}{V_n^2}\)  分母・分子に\(V_n\)をかける

      \(=\displaystyle\frac{P_nZ_s}{V_n^2}\)  \(P_n\):基準容量 [V・A] (∵\(P_n=\sqrt{3}V_nI_n)\)

※百分率同期インピーダンスを求める場合
 \(%Z=\displaystyle\frac{P_nZ_s}{V_n^2}\) × 100  単位法の式に100をかける

解答

(1)(a)  (A) の特性曲線と特性曲線を得る試験方法 (試験センター解答例)
(A) の特性曲線は三相短絡特性曲線である。
この特性曲線は,同期機の電機子端子を三相全て短絡し,定格速度で回転させたとき,界磁電流を変化させて電機子短絡電流を測定する試験により得られる。

(1)(b)  (B) の特性曲線と特性曲線を得る試験方法 (試験センター解答例)
(B) の特性曲線は無負荷飽和曲線である。
この特性曲線は,同期機の電機子端子を三相全て開放し,定格速度で回転させたとき,界磁電流を変化させて電機子端子電圧を測定する試験により得られる。

(1)(c) 短絡比の定義 (試験センター解答例)
短絡比とは,定格速度で回転させ,端子開放時に定格電圧を発生させる界磁電流において,電機子端子を三相短絡したと仮定したときの持続短絡電流の定格電流に対する比である。

(2)(a) 同期発電機の定格容量 [kV⋅A] 
定格電圧 \(V_n=200\) [V] , 定格電流 \(I_n=144.3\) [A] であるから、定格容量 \(P_n\) [kV・A]は、

  \(P_n=\sqrt{3}V_nI_n\)

    \(=\sqrt{3}\times 200\times 144.3\)

    \(\unicode{x2252} 49987\) [V・A] → \(50.0\) [kV・A]

(2)(b) 同期発電機の単位法で表した同期インピーダンス [p.u.]
短絡比の定義より短絡比 \(K\) は、

  \(K=\displaystyle\frac{I_{f1}}{I_{f2}}\)

    \(=\displaystyle\frac{2.8}{2.5}\)

    \(=1.12\)

よって、単位法で表した同期インピーダンス \(Z\) [p.u.]は、

  \(Z=\displaystyle\frac{1}{K}\)

    \(=\displaystyle\frac{1}{1.12}\)

    \(\unicode{x2252} 0.89286\) → \(0.893\) [p.u.]

(2)(c) 同期発電機の同期インピーダンス [Ω] 
同期インピーダンス \(Z\) [Ω] は、

  \(Z[p.u.]=\displaystyle\frac{P_nZ[Ω]}{V_n^2}\) より

  \(Z[Ω]=\displaystyle\frac{Z[p.u.]V_n^2}{P_n}\)

     \(=\displaystyle\frac{0.89286\times 200^2}{49987}\)

     \(\unicode{x2252} 0.71447\) → \(0.714\) [Ω]

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