問題
ガス絶縁開閉装置に使用される SF\(_6\) ガスに関して,次の問に答えよ。
(1) ガス絶縁に影響を及ぼす項目を三つ挙げ,理由及び管理方法を項目ごとに 70 字程度で述べよ。
(2) ガス絶縁開閉装置の異常時の内部開放点検や,撤去,廃棄時に,SF\(_6\) ガスを取り扱ううえで,環境面から技術的に配慮すべき点を 100 字程度で述べよ。
解答のポイント
① SF\(_6\) ガスの特徴
SF\(_6\) ガスは、気体絶縁材料としてガス遮断器 (GCB) やガス絶縁開閉装置 (GIS)、ガス絶縁変圧器等に利用され、以下の特徴を有しています。
・高い絶縁耐力を持つ
・高いアーク消弧能力を持つ
・無色、無臭、無毒のガスで安全である
・化学的、熱的に安定している
・熱伝達係数が大きく、冷却能力が高い
・固体液体材料に比べても誘電率、誘電正接が小さいため、誘電損が少ない
・空気より重い
・地球温暖化に影響を及ぼす (同量の二酸化炭素の 20 000 倍以上)
② SF\(_6\) ガスの運転管理
SF\(_6\) ガスは、純度が高く圧力が高い状態であれば高い絶縁性能を持ちますが、気体であるため不純物等が混じりやすく、以下の項目について適切に管理を行う必要があります。
1) 水分
SF\(_6\) ガス中の水分は外気温の変化に伴い絶縁物表面で結露すると絶縁破壊電圧を低下させたり、分解ガスと反応してフッ化水素を生成し絶縁材料を劣化させるため、水分量が規定値以下であることを露点計等で確認する必要があります。
2) じんあい
SF\(_6\) ガスは平等電界中では高い絶縁性能を持ちますが、金属等のじんあいが混入し電界集中が起こり不平等電界になると絶縁性能が低下します。現地据付時のダストメータでのチェックや、部分放電による分解ガスの発生をガスチェッカ等で確認します。
3) 純度
水分、フッ化水素、空気等の不純物が混入すると純度が低下し絶縁性能が低下するため、純度計等で純度が許容値以上であることを確認します。
解答 (試験センター解答例)
(1) ガス絶縁に影響を及ぼす項目を三つ
下記のうち三つを解答する。
①ガス密度
SF\(_6\) ガスはガス密度の低下に伴い絶縁破壊電圧が低下するため、ガス密度計等で絶縁性能の維持に必要なガス密度が確保できていることを確認する。
②ガス中水分量
SF\(_6\) ガス中の水分は温度変化に伴い絶縁物表面で結露すると沿面絶縁破壊電圧を低下させるため、水分量が規定値以下であることを露点計等で確認する。
③分解ガス
SF\(_6\) ガスは部分放電等のアークにより分解ガスを生じ、分解ガスからの生成物が絶縁物を劣化させるため、分解ガスの発生有無をガスチェッカ等で確認する。
④金属などの異物混入
金属異物が混入し不平等電界になると絶縁破壊電圧が低下 (絶縁性能が低下) する。部分放電や振動の有無、分解ガスの発生をガスチェッカ等で確認する。
⑤ガス純度
SF\(_6\) ガスは水分混入等により純度が低下すると絶縁破壊電圧が低下するため、純度計等で規定値以上の純度が維持できていることを確認する。
(2) 異常時の内部開放点検や、撤去、廃棄時に、SF\(_6\) ガスを取り扱ううえで、環境面から技術的に配慮すべき点
温室効果がCO\(_2\) の2万倍以上と極めて高いSF\(_6\) ガスの大気放出を防止するためガス回収を実施する。また、SF\(_6\) ガスのクローズドサイクル化を図るため、使用済みガスは基本的に再利用し、再利用できない場合は再精製等的確に処理する。


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